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神戸地方裁判所 平成10年(わ)242号

右の者らに対する各法人税法違反被告事件について、当裁判所は、検察官植田浩行、弁護人(私撰)石松竹雄各出席の上審理し、次のとおり判決する。

主文

被告人第一建設株式会社を罰金三〇〇〇万円に、被告人米花康一を懲役一年六月にそれぞれ処する。

被告人米花康一に対し、この裁判確定の日から二年間右刑の執行を猶予する。

理由

(罪となるべき事実)

被告人第一建設株式会社(以下「被告会社」という。)は、肩書地に本店を置き、宅地建物取引業、不動産賃貸業等を目的とする資本金四九〇〇万円の株式会社であり、被告人米花康一(以下「被告人米花」という。)は、被告会社の代表取締役として業務全般を統括しているものであるが、被告人米花は、被告会社の業務に関し、法人税を免れようと企て、架空の製造原価を計上する方法などにより所得を秘匿した上、

第一  平成五年一一月一日から同六年一〇月三一日までの事業年度における被告会社の実際の所得金額が一億六〇九五万四四二九円(別紙修正損益計算書(1)参照)、これに対する法人税額が五一九二万八一〇〇円であるにもかかわらず、同年一二月二〇日、兵庫県伊丹市千僧一丁目四七番地三所在の所轄伊丹税務署において、同税務署長に対し、その所得金額が五六二二万一三一二円で、これに対する法人税額が一二六五万三二〇〇円である旨の内容虚偽の法人税確定申告書を提出し、そのまま法定納期限を徒過させ、もって、不正の行為により、右事業年度における正規の法人税額との差額三九二七万四九〇〇円(別紙ほ脱税額計算書(1)参照)を免れ

第二  同六年一一月一日から同七年一〇月三一日までの事業年度における被告会社の実際の所得金額が一億八九五一万六九四九円(別紙修正損益計算書(2)参照)、これに対する法人税額が六六二二万二〇〇円であるにもかかわらず、同年一二月二二日、前記伊丹税務署において、同税務署長に対し、その所得金額が一億三六四一万三七四二円で、これに対する法人税額が四六三〇万六六〇〇円である旨の内容虚偽の法人税確定申告書を提出し、そのまま法定納期限を徒過させ、もって、不正の行為により、右事業年度における正規の法人税額との差額一九九一万三六〇〇円(別紙ほ脱税額計算書(2)参照)を免れ

第三  同七年一一月一日から同八年一〇月三一日までの事業年度における被告会社の実際の所得金額が五億五〇七八万一八四三円(別紙修正損益計算書(3)参照)、これに対する法人税額が二億四四七万三〇〇〇円であるにもかかわらず、同年一二月二〇日、前記伊丹税務署において、同税務署長に対し、その所得金額が三億一八八三万六一五五円で、これに対する法人税額が一億一七四九万三六〇〇円である旨の内容虚偽の法人税確定申告書を提出し、そのまま法定納期限を徒過させ、もって、不正の行為により、右事業年度における正規の法人税額との差額八六九七万九四〇〇円(別紙ほ脱税額計算書(3)参照)を免れ

たものである。

(証拠の標目)(括弧内の番号は証拠等関係カードにおける検察官請求の甲乙の番号を示す。)

全部の事実について

一  被告人米花の公判供述

一  被告人米花の検察官調書(乙四)

一  森田繁吉、米花浩美の各検察官調書(甲一四、一八)

一  査察官調査書五通(甲九~一三)

一  「所轄税務署の所在地について」と題する書面(甲一九)

一  商業登記簿謄本三通(乙一~三)

第一の事実について

一  脱税額計算書(甲二)

一  証明書(甲五)

第二の事実について

一  脱税額計算書(甲三)

一  証明書(甲六)

第三の事実について

一  脱税額計算書(甲四)

一  証明書(甲七)

(法令の適用)

罰条

1  被告会社 いずれも法人税法一六四条一項、一五九条一項、二項(情状による)

2  被告人米花 いずれも法人税法一五九条一項

刑種の選択 被告人米花につき懲役刑選択

併合罪加重

1  被告会社 刑法四五条前段、四八条二項

2  被告人米花 刑法四五条前段、四七条本文、一〇条(犯情の最も重い第三の罪の刑に法定の加重)

刑の執行猶予 被告人米花につき刑法二五条一項

(量刑の理由)

本件は、被告会社の代表取締役である被告人米花が、架空工事の代金請求書及び領収書等を基に架空の製造原価を計上する方法により約三年間にわたって被告会社の業務に関し法人税の支払を免れたいという法人税法違反三件の事案である。

本件各犯行は、将来の営業不振に備え、あるいは、被告人米花の父米花康次の障害保険金が被告会社に入ることにより多額の法人税が課せられることに対処するなどの理由から敢行されたもので、被告人米花が被告会社の経営を父康次から承継した経緯等弁護人指摘の事情を考慮に入れても、犯行の動機に格別酌むべき事情があるとはいえない。そして、犯行の態様は、被告会社の下請企業に架空の外注工事代金の請求書及び領収証等を度々発行させ、これを使って工事を仮装し、架空の製造原価を計上する方法により脱税を重ねていたもので、計画的かつ巧妙な犯行である上、右犯行による脱税金額は、三年間で合計一億四六〇〇万円余りもの多額に上っており、本件の犯情ははなはだ芳しくない。加えて、被告人米花は、前年度の納税額や会社の経営状況等を勘案して、当該事業年度の目標納税額なるものを自ら設定し、担当者に命じて架空の外注工事の資料を整えさせるなどしていたもので、その供述等に照らしても、本件各犯行当時、申告納税を正しく行うという意識に極めて乏しかったことが明らかである。以上にかんがみると、被告人らの刑責を軽視することはできないのであって、今後の被告会社の業務に与える影響等を考慮しても、なお、被告人米花に科すべき刑罰としては懲役刑の選択が相当である。

しかしながら、他方、被告人米花は、申告納税制度に対する自己の認識が甘かったことを反省し、今後は会社代表者として正確な納税申告を行う旨誓っていること、本件に関し税務当局による査察が行われた後、被告会社において法人税の修正申告を行い、法人税の本税、延滞税、重加算税をすべて納付し、その他の諸税についても同様の納付を済ませていることなどの酌むべき情状も認められるので、これらを考慮して、被告会社に対しては罰金刑を主文掲記の程度にとどめるとともに、被告人米花に対しては懲役刑の執行を二年間猶予して、同被告に社会内での自力更生の機会を与えることとした。

よって、主文のとおり判決する(求刑・被告会社に対しては罰金四〇〇〇万円、被告人米花に対しては懲役一年六月)。

(裁判官 足立勉)

修正損益計算書(1)

自 平成5年11月1日

至 平成6年10月31日

<省略>

修正損益計算書(2)

自 平成6年11月1日

至 平成7年10月31日

<省略>

修正損益計算書(3)

自 平成7年11月1日

至 平成8年10月31日

<省略>

ほ脱税額計算書(1)

自 平成5年11月1日

至 平成6年10月31日

<省略>

ほ脱税額計算書(2)

自 平成6年11月1日

至 平成7年10月31日

<省略>

ほ脱税額計算書(3)

自 平成5年11月1日

至 平成6年10月31日

<省略>

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